駅のホームを歩きながら欠伸を一つ。今日も下北沢はいつもと変わらない朝を迎えたようだ。改札を抜けると、さて今日も練習だ、と気合が入る。
階段を降り、練習スタジオに向う。集合時間までにはあと10分あるので、のんびり歩いても間に合うと、ゆっくり下北の町並みを感じながら闊歩する。
電車が目の前を通り過ぎる。踏み切りを越えればスタジオというところで捕まってしまった。ここの踏み切りは捕まってしまうとなかなか開かない。僕はここで15分待ったこともある。
果たして、左右から2本ずつ電車を見送るもなかなか踏み切りは開かず、うんざりしていたところで、向こう側にいたカップルが行動に出た。左右を確認しすばやく踏み切りを潜り抜け、怖ぇ~とか言いながらこちらへ渡って来た。危ないことするな、とあきれ返っている僕は向こう側にいる草臥れたスーツを着た坊主の男に気づいていない。
やがて左側から電車がやってくる。回送電車と表示された電車はさながら牛歩、悠長な電車がイライラをさらに募らせたのか、隣の人が舌打ちをする。
ガタゴトとのんびり過ぎる電車の車両連結部分から細切れの映像で向うの様子が見える。何と無しに見ていた前方の細切れの映像のなかに、草臥れたスーツを着た坊主頭の男がいた。動きがそわそわした様子で動きが胡乱だ。
気になったので注意して見ていた。すると男はゆっくりと踏み切りを潜った。回送電車は依然、悠長な様子で通過中にもかかわらず、だ。
ガタゴトという音で向う側の音は聞こえないが、空気が一転するのが分かった。こっち側の大半は気づいていない。
坊主の男はゆらゆらと回送電車に近づく。向うでは身を乗り出したおばさんが男にむかってしきりに何か叫んでいる。向うの異変はこちら側まで伝染しはじめている。
男にとって周りの様子は関係ない。あと少しで触れてしまうような距離まで電車に近づくと、膝を地面に付いた。ちょうど立てひざのような格好だ。
ふいに、僕には男がニヤリ、微笑んだように見えた。
ガタゴト。
男は土下座のように体勢を屈めた。
ガタゴト。
頭を車輪と線路の隙間に滑り込ませるように。
ガタゴト。
車輪と線路にはさまれた坊主頭がぐしゃりとつぶれるのと、どこかから聞こえた甲高い悲鳴がシンクロして・・・目が覚めた!!!
久しぶりに二度寝できないくらい怖い夢をみました!朝ごはんに大根のお味噌汁を飲んで立ち直りました。 逆太郎(本当に怖かったです)