小学校の途中で九州に転校していった友達と10年ぶりに会った。
面影は変わっていないのだが、とある大学の法学部ということでアカデミックな雰囲気を纏っていた。それと多分な向上心も。話を聞いたり、話を聞いてもらうだけで刺激されるような、そんな奴になっていた。
至極当然に思い出話に花が咲き、久しく思い出してなかったような名前も飛び交った。あの時はこうだっただの、誰それがああだっただの。
10年経てば人は変わる。10年という歳月を『老い』使った奴と、10年という歳月を『成長』に使った奴と2通り(もっとアルカモ)あるのだなと思った。
自分は『成長』できてるかな、まだまだ出来ることがきっとあるはずだとか、メランコリックに奮い立つというなかなか面倒くさい状況に陥った帰り道、突然小学校の担任の先生の奇妙な習慣を思い出した。
授業の始まりの鐘がなったら席に着き、教科書を開いておきなさいというのが先生の教えであった。しかし小学生のアクティブさにその教えはほぼ無意味、走り回ったり笑い転げる生徒達がとても多かった。そのため、先生は教室に入ってくるなり声を大にして言い放つのだ、「はい、氷!」と。
そうするとピュアな僕らはぴたっとそのまま動きを止める。走ってた奴も笑ってた奴も、なんともばつが悪そうに止まる。そして全員の動きを把握した先生は更に声を大にして言い放つ、「やわらかい氷!!」と。
今考えれば実に間抜けである。『やわらかい氷』て。氷なのにやらかいの?氷なのになんでやらかいの?
しかしやっぱり当時の僕らはその言葉に何の違和感も持たず、その場で楽な姿勢をとる。そして怪しいやつは、あなたは今何をしていましたか、と聞かれ、当然のように正直に白状するのだ。
あはぁん、懐かしいなぁとメランコリックに奮い立ったなりに、僕は頬を緩め、寒ぃぃ~とか言う。 逆太郎(てやっ)